漫画『カムイ伝(1~21巻)』(白土三平著/小学館/昭和51年)



    

    

    

    



白土三平作品コレクションの最後は『カムイ伝(1~21巻)』。オリジナルは昭和39年(1964年)から昭和46年(1971年)に執筆されている。

もともとTVアニメ『忍風 カムイ外伝』で白土作品にハマッたワタシだが、小学5年生で『カムイ伝』を読んだことになる。当時、母が丸ごと21巻買ってくれていたのだが、ワタシはあればあるだけ読んでしまうので、押し入れにセットを隠して、1日1冊ずつ与えてもらっていた。ある日、押し入れにある残りを発見し、全部読んでしまったが(笑)。
ただ、白土作品の多くは忍術アクションものが多くて小学生でも楽しめたのだが、『カムイ伝』では忍術アクションがさほど出てこず、武士の百姓への弾圧や飢饉、一揆といった重く地味なものが多くを占め、あまり面白く感じた記憶がない(笑)。

ただ、本エントリーを書くにあたり、2回ほど通して読んだが、これは面白い!!! 白土三平氏の代表作と言って間違いない(小学生には薦めないけど。笑)。

本作品のテーマは江戸時代の日本の「身分・階級制度」。中学・高校の社会科の授業で「士農工商」について習ったが、ここで描かれているのはそんなシンプルな4文字ではな。武士は武士で家柄・役柄(役職)で上には逆らうことができない。この辺りはTVの時代劇でもよく目にするので目新しくはない。
しかし、百姓については本百姓、下人の区別があり、下人は本百姓の使用人のような存在で、食事は土間で摂らなければならない。
さらに百姓よりも下の存在として「穢多(エタ)/非人」があり、本作品では穢多と非人の区別は特にない。非人は農作が許されておらず、百姓の牛馬が死んだときにはそれを貰い受け、皮を胚剥いで肉や内臓を食べる。あるいは物乞いをしたり、百姓の出したゴミを拾ってその中から食べられるものを食べる。
ただ、非人は牢番をしたり、犯罪者の処刑のときに処刑役をするなどが描かれている。その処刑の方法もかなりリアルに描かれていて、白土氏はいったいどこからこのような情報を得ていたのか不思議なくらいだ。

さて、本作品のキーとなる登場人物は4人。
非人・カムイは百姓からさげすまれる非人の生活から抜け出すために強くなることを望む。その結果、忍者となる。
百姓・下人の正助はこっそり読み書きを習うなど頭のいい少年で、本百姓になることを望み、その後、実現。こっそり学んだ学問を活かして、いろいろなアイデアで村の生活を便利にし、村の中心的存在となる。
家老の息子・草加竜之進は剣術に長けているが、目付の陰謀により一門断絶、本人は逃げて非人の生活を送り、復讐の機会をうかがう。
本作品の途中から登場する町人・夢屋七兵衛は前科者で島抜けに成功。商才を活かして成り上がり、カネの力で武士に対抗しようとする。

これら身分の違う4人が複雑に関係を持ちながら、それぞれが夢や目的を持って生きていく。

正助の熱心な要望で村は荒れ地を開墾し、非人たちとも連携してそれぞれ豊かになっていく。また、ひょんなことから草加竜之進は正助の村の代官となり、今までの厳しくインチキな年貢の取り立てを改める。

で、ここで終わればハッピーエンドなのだけれど、そうはいかないところが白土作品。
草加竜之進は急遽代官の任を解かれ、年貢の取り立ては昔のように戻る。さらに開墾地の見地を行おうとする武士に対して百姓は一揆を起こし、勝利を収めるものの、首謀者の1人として正助は取り調べと称する拷問を受ける。他の首謀者が処刑されたのに対し、正助だけは新代官の意図により刑を免れる。ところが、村に返されると村民は正助を裏切り者と見なし、集団リンチで殺されてしまう。
夢屋は他の商人を出し抜いたり陥れたりしながらのし上がるが、他の商人に陥れられ、文無しに戻る。
カムイは忍者として誰にも負けないぐらい強くなったが、強くなってもやりたいことは何もできないことに絶望する。また、所詮は使い捨ての下忍にすぎず、抜け忍の道を歩むことになる。

そんなワケで、それぞれの登場人物がそれぞれの身分からの脱却を夢見て戦うのだが、夢かなわず絶望して終わってしまうという無常観・・・。

ちなみに本作品冒頭で「山丈」と呼ばれる巨人が出てくる。
山丈はその後3回出てくるが、1回目は非人・カムイがよちよち歩きのとき、非人部落に山丈が出てきて、カムイにおにぎりをもらい、「カムイ!」と叫ぶ。
2回目は仲間はずれの白オオカミが周りを制圧して雄叫びを上げるシーン。ここでも「カムイ!」と叫ぶ。
3回目は非人頭の陰謀で非人の恋人・ナナが集団レイプされた後、自分も裸になってナナを抱き上げ、百姓と非人という身分差があるにもかかわらず、恋人宣言をするシーン。ここでもやはり山丈は「カムイ!」と叫ぶ。

つまり、「カムイ!」という叫びは差別に立ち向かうそれぞれの姿に対して発せられた言葉であり、これこそが本作品の主題である。非人・カムイという一人の人間を指していないわけである。


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テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

tag : カムイ伝 白土三平


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