ポラロイド『スペクトラ』カメラ
ポラロイド『スペクトラ』はポラロイドカメラの中でも実用的で個人的には好きなカメラ。1987年の発売。イギリス製。フィルムは同時に発売された『スペクトラ』フィルムを使用する。長方形の画面なので600フィルムよりも使いやすい(SX-70や600フィルムの方が「ポラロイドらしい」という意見もあるだろうが)。
カメラ側面のハンドストラップ下にあるレバーをスライドさせるとスプリングでカメラが開き、レンズ部分が現れる。
レンズは125mmF10の3枚構成で、真ん中の1枚に「クインティックレンズ」を使用している。
このカメラはポラロイドお得意の超音波AF機構を搭載しているのだが、ゾーン区分は60cmから無限遠までの10ステップ。それを勾玉状のプラスチックレンズを回転させ、最適な位置で撮影するというもの。
イメージとしては円盤上にレンズを10枚並べそれらのレンズをくっつけて勾玉状にしているというところか。レンズを前後に繰り出すわけではないので、一眼レフ用レンズのインナーフォーカスに似ていて、合焦用レンズが勾玉状になったといったところか。
一眼レフ用レンズでは高精度が求められるが、このカメラはせいぜい10ステップなので、その範囲ではむしろ大雑把ながらシンプルな動作で確実に精度が出せたのではないだろうか。
ポラロイドはアメリカ企業だからだろうか、シンプルさを求める方向での発明/開発に長けていたように思う。
(上記写真で少しトップカバーが歪んでいるのは、向かって右側の内部ラッチが破損して浮いているため)
このカメラでもうひとつ優れていると思うのがファインダー。同社では「テレスコーピック・ビューファインダー」と称している。ポラロイド製品にしては(失礼!)パーツをたくさん使っていて、ファインダーの見え味は抜群。取説には、「6枚構成レンズ、2枚のプリズムおよび4枚のミラーレンズにより明るく鮮明に見える光学式ファインダー 倍率:0.5(実物の半分)」とある。ただし、一眼レフではないので、近接撮影においてはパララックスが若干生じる。
画面下には撮影距離表示、撮影OKマーク、警告マークが表示されるのもポラロイドカメラとしては画期的。
ファインダー横には「システムコントロールパネル」があり、左からファインダー内表示のメートル/フィート切り替え、音声セット/解除、セルフタイマー、AF/AF解除(解除すると無限遠に設定される)、ストロボON/OFF、明暗コントロール(中間での設定不可)となっている。通常はレバーが一直線になっていれば綺麗に撮影できるというシンプルで合理的な表示方法となっている。
さらにその横にはリモコン端子、ストロボ充電ランプ、フィルムカウンターが並び、ファインダーから少し目をそらすと必要な情報を全て確認できるというのは実用的で優れていると思う。
このカメラはアクセサリーも充実していて、リモコン、特殊効果フィルター(2種)、テーブルトップ三脚、1/2倍クローズアップレンズ、等倍クローズアップスタンドなどが用意されていた。
1/2倍クローズアップレンズは25.4cm(10インチ)の距離を伸び縮みするコードで測るという原始的な方法でピントを合わせる、というか撮影距離を決める。ファインダーにかぶさる部分には薄いプリズムが入っており、パララックスを補正する仕組み。
等倍クローズアップスタンドは立体物撮影用ではなく複写用のものではあるが、切手やコインなどを撮影すると、ポラロイド写真とは思えないぐらい(失礼!)綺麗な写真が撮れた。
『スペクトラ』カメラは写真のMB(マットブラック)のほかMS(メタリックシルバー)の2色が基本だが、実際はブラウンのものとかいくつかの種類があったようである。
さらに、1990年には機能を強化し、レンズも5枚構成のガラスレンズを使用した『スペクトラ・プロ』が発売されている。
1995年には低価格バージョンの『スペクトラE』が発売されたが、デザインが流線型にモディファイされている。その後、『スペクトラ』の流線型バージョンも同年に発売されている。
テーマ : ★カメラ&レンズ・機材
ジャンル : 写真
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